ラブラドールの毛色を決定する遺伝子

ラブラドール・レトリバー (Labrador Retriever) には、アメリカンとヨーロピアンといったタイプに分かれ、体格に多少の違いがあります。
毛色については、一言にイエローといってもクリーム色からキツネ色に至るまで、濃淡や色調に幅が認められますが、大まかにブラック、チョコレート(または「レバー」と表現することもあります)、イエローの3色があります。

ベルギーから連れてきたチョコレート・ラブをイエロー・ラブと交配させることになり、ラブラドールの交配による毛色について調べてみました。

まずは、分かりやすく理解するためにブラック・ラブとチョコレート・ラブを決定する遺伝子についてです。

ブラック・ラブとチョコレート・ラブの遺伝子

ラブラドール ・ レトリバーの毛色にはブラックまたはチョコレートを決定する情報として、「b」 遺伝子があり、ブラックとなる大文字Bとチョコレートとなる小文字bがあります。
ラブラドールは、「b」 遺伝子を2つ持っており、両親からひとつずつ「b」 遺伝子を継承します。
そのため2つの「b」 遺伝子は、以下の3つの組み合わせとなります。

BB
Bb
bb
Bは優性 (顕性) 遺伝子、bは劣性 (潜性) 遺伝子です。
これがどのような毛色になるかというと、
BB:ブラック
Bb:ブラック。大文字Bの優性 (顕性) 遺伝子が存在するため、チョコレートとなる遺伝子がオフ
bb:チョコレート
では、イエローはどのような遺伝子に左右されるのでしょうか。

イエローラブの遺伝子

イエローの遺伝子情報は、これとは別の遺伝子の組み合わせによって決定されます。
それを「e」遺伝子と言います。
「e」遺伝子は、「b」遺伝子を無視し、ブラックとチョコレートを表現する「b」遺伝子のスイッチをオフにしてしまうことがあります。
では、どのようにイエローの「e」遺伝子は、ブラックとチョコレートを無視する遺伝子となるのでしょうか。
「e」遺伝子も「b」遺伝子と同様に2つ持っており、両親からひとつずつ継承します。
「e」遺伝子は、優性 (顕性) 遺伝子の大文字E、劣性 (潜性) 遺伝子の小文字eといった2種類が存在します。
Eは、ブラックまたはチョコレートの「b」遺伝子の影響を受けます。
つまり、E<b。
eは、ブラック、チョコレートとなる「b」遺伝子の影響をオフにします。
つまり、e>b

EE:ブラックまたはチョコレート。大文字Eの優性 (顕性) 遺伝子が存在するため「e」遺伝子はスイッチオフになり、「b」遺伝子で表現される
Ee:ブラックまたはチョコレート。大文字Eの優性 (顕性) 遺伝子が存在するため「e」遺伝子はスイッチオフになり、「b」遺伝子で表現される
ee:イエロー。「b」遺伝子をスイッチオフにする

ということで、「b」遺伝子と「e」遺伝子の組み合わせには以下9つがあります。

図1

各組み合わせがどのような遺伝子を保有しているかというと、

図2

図2により、両親の遺伝子が分かれば何色のパピーが生まれる可能性があるか、または生まれたパピーの毛色により両親の遺伝子の型が予想できます。

図2によると、イエロー・ラブ同士を交配させた場合、両親のどちらも大文字E遺伝子を持っていないためイエローのパピーが産まれます。
また、チョコレート・ラブ同士を交配させた場合、両親のどちらもブラックとなる大文字B遺伝子を持っていないためブラックのパピーは生まれません。
しかし、どちらもEebb型のチョコレート・ラブを交配させた場合、EEbb、Eebbはどちらもチョコレートなので75%はチョコレートとなりますが、eebb型のイエローが25%の確率で生まれます。
ちなみに、EEbb型同士のチョコレート・ラブを交配させた場合は、EEbb型しか生まれないため全部チョコレートです。

また、図1、図2から分かるようにブラック・ラブには、4種類の遺伝子 (EEBB、EEBb、EeBB、EeBb) が存在します。
ここから、ブラック同士を交配させた場合、型によってはブラック、チョコレート、イエローの3色のパピーが生まれる可能性があることが分かります。

今回の交配では、チョコレート・ラブ♂とイエロー・ラブ♀で、9匹のパピーが生まれ、全部ブラックでした。
このことから、
イエロー・ラブ♀は、eebb型ではない。
おそらくチョコレート・ラブ♂は、EEbb型。
(ちなみにチョコレート・ラブの両親ともチョコ・ラブで8匹の兄弟姉妹は全部チョコレートです)
パピーは、EeBbのブラック、と予想できます。