低糖質ダイエットは「炭水化物サイクリング」で効果的に

低糖質ダイエットは、昨今注目を浴びている「ケトン体ダイエット」すなわち「ケトジェニックダイエット」とともに一躍脚光を浴びています。
しかし、炭水化物を制限した食事療法は、副作用として低エネルギー状態に陥ることや頭痛が懸念されており、長期的に行うことへの安全性について不安視する研究結果がなされています。
最近のある研究では、アメリカ人約25,000人の内、低糖質食を摂取した人が 低糖質食でない食事を摂取した人に比べ、短命リスクが32%高かったことが報告されました。
そのため、糖質制限ダイエットでは、リスキーな副作用と低糖質食の安全性に関しての懸念が続いています。
そこで「炭水化物サイクリング」という考え方が出てきました。

炭水化物サイクリングとは、毎日、毎週、毎月、といった単位で摂取する炭水化物量を変えることで、スポーツ・パフォーマンスを最大に高め、筋肉を付けながら体脂肪と体重を落とすダイエット戦略です。
このアプローチは、ボディビルダーやアスリートなど体重を重視したスポーツでは長年行われてきたものです。
炭水化物に関する現在の社会的関心の高まりにより、このアプローチが健康やフィットネスの書籍をはじめ、インスタグラムでは ハッシュタグ「#carbcycling」として35万件以上のユーザー投稿があり、広く拡散しています。
この炭水化物サイクリングは、低糖質ダイエットと比べると理論的にはストレスが低く柔軟性があるため、食事がより楽しめ、何より食物繊維が摂取できるというメリットがあります (炭水化物 = 糖質 + 食物繊維) 。

炭水化物サイクリングの利点

炭水化物サイクリングの利点は、現在理論上のものです。
というのも炭水化物サイクリングは、主にアスリートの低糖質食、もしくは一定期間の高糖質食 (「炭水化物チャージ」) のいずれかの効果に 基づく研究であって、低糖質と高糖質の組み合わせによる効果に 基づく研究ではありません。
しかし、アスリートでは、低糖質の食事に高糖質の食事を何日間か組み合わせた方が効果があるとされています。

どのようなダイエットであっても厳しいカロリー制限をすれば、代謝が悪くなり、空腹を促すホルモンに影響を与えることで体重増加につながります。
研究では、炭水化物を摂取することにより、一時的に代謝を高め、同時に空腹感を鈍くするホルモン、レプチンのレベルを高めることで結果的に減量を促します。
さらに、炭水化物が豊富な食品は、アスリートのパフォーマンスを高め、運動能力を回復し、タンパク質だけでは足りなかったエネルギーを燃焼します。
これは燃焼というよりは、むしろ筋肉の成長に使われます。
したがって、一時的に炭水化物が豊富な食事を摂るとアスリートでなくても新陳代謝の停滞を防ぎ、トレーニング効果を高め、脂肪を燃焼して筋肉の増強を促すことになります。
そのため低糖質食であっても脂肪燃料が活発になる体となるのです。

ちなみに、低糖質食は短期的な減量を促進しますが、ハーバード大学の研究によると811人の肥満の成人に、低糖質食、中糖質食、高糖質食を割り当てたところ、2年後の体重減少の差に大きな変化は見られなかったという結果がでています。
そのため、低糖質ダイエットによって、体重減少する人もいますが、高糖質食療法であってもカロリーを減らす食事であれば体重が減少する結果が表れるということです。
しかし、上述の通り、炭水化物サイクリングの研究の効果の有無については分からず、長期的な食事療法の安全性についても分かっていません。
さらにデメリットとしては、実践自体が簡単ではありません。
炭水化物サイクリングを厳密に実施するには多くの計算が必要で、食事の準備や計量、さらには忍耐と実験が必要になります。

炭水化物サイクリングを挑戦する場合には、まず医師、栄養士に相談する必要があります。
そして、栄養士に十分な栄養とカロリーを、うんざりするほどめんどうな計算でしてもらいます。
ここでは一般的なガイドラインを示すことにします。

まず、自分の標準摂取カロリーは何カロリーであるか計算し、目標となる1日のカロリーを算出します。
標準摂取カロリーは、自分の体重の450gに対し、体重を減らすには10を、体重を維持するには12を、体重を増やすには15を掛けることによって、大まかにカロリーを見積もります。

標準摂取カロリー
体重を減少:体重 (g) ÷ 450 × 10
体重を維持:体重 (g) ÷ 450 × 12
体重を増加:体重 (g) ÷ 450 × 15


高糖質摂取の日には、必要カロリーの約50%を炭水化物から、低糖質摂取の日は、必要カロリーの約25%を炭水化物から摂取するようにします。
体重の450g当たりタンパク質1gを消費するとし、残りのカロリーは脂肪から摂取します。
(脂肪1g=9kcal、たんぱく質/炭水化物1g=4kcal)。
たんぱく質量は、毎日ほぼ同量で、摂取量が変化するのは炭水化物、そして必要なカロリーは脂質量で調整します。
つまり、必要カロリーの内、低糖質摂取日は脂肪摂取が多くなり、高糖質摂取日の脂肪摂取は少なくなります。

まず、1週間のうち、4日間を高糖質とし、3日間を低糖質の日として始めます。高糖質の日には、エクササイズの日とすればエネルギー、パフォーマンス、リカバリーの最高のメリットが得られます。
しかし、運動習慣、体質、健康条件により、高糖質食の必要量に影響があります。
おそらく有効な炭水化物サイクリングが分かるまで調整が必要です。

体重を減らし、筋肉を増強することを目的とするためには、一定のカロリーを摂る必要があり、そのためには健康的で質の高い食事を摂らなければならないことに十分留意していただきたいのです。
摂取する炭水化物の種類で、健康に影響があります。
例えば、炭酸飲料やお菓子などの糖分、白米や白パンなどのデンプンを選択することは良質の糖質ではないため良い選択肢とはいえません。
分解しやすい糖質を摂取するには、サツマイモ、麦、キヌア、豆類といったGI値 (血糖インデックス) の低い炭水化物を選択してください。
また、高糖質食の日には無理をしないように注意してください。
低糖質、高糖質の日では思ったほど違いはないかもしれません。
高糖質の日は、何でも食べ放題の「今日は特別日」といった意味ではありません。

炭水化物サイクリングは、低糖質ダイエットよりも長期間、継続可能かもしれません。
そして、減量とトレーニングの結果が出やすいかもしれません。
また、分解しやすい糖質を含む炭水化物は、体脂肪の減少を促すことがあります。
現段階で、炭水化物サイクリングの効果については立証されていません。
しかし 結果は明らかにがん、心臓病や脳卒中のリスクが下がり、バランスの良い適量の糖質を選択することは健康的な食事として間違いないでしょう。
炭水化物、タンパク質、脂肪の割合ではなく、野菜、豆類、魚貝類、鶏肉、果物、全粒穀物、ナッツ、種子などのさまざまなバランスの良い食品を摂取することです。
最高の食事とは、持続可能で、面倒な計算や無理をしないことです。

参考:Carb cycling adds a new spin to a low-carbohydrate diet